映像で学ぶCLIPSを推進しています

持続可能な社会の資本となる人づくりのためICT映像教材による子どもから大人までの多様な学びを支援しています。

授業レポート
長野県松本市

どうして里山は大切なの?

  • 2014.01

長野県松本市の源池小学校は、明治37年創立の100年以上の歴史ある小学校です。
校庭には手作りのツリーハウスがあったり、ビオトープがあったり、豊かな自然と一体となったユニークな取組みが行われています。

 

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今回のESD推進事業では、小学3年生を対象に、「里山」と「山道」の2つをテーマに、小学校近辺の里山や山々の自然の恵みやその価値、いずれも人が手を入れることにより、それらの自然が守られていることを、地域で収録した映像教材やグループに分かれてワークショップ形式での授業により学んでいきます。

授業では、既に小学校の子どもたちと一緒に里山体験の授業を進める、「寿さと山くらぶ」の鈴木喜一郎さんと、地元のNPOで山岳ガイドを務める「やまたみ」の石塚聡実さんが、映像教材を活用しながら、それぞれ45分の授業を担当し、それぞれの授業の後半を子どもたち自らが考えるグループワークに時間を割いて授業を実施しました。

最初の授業のテーマは、鈴木さんが担当する「里山」です。地域で里山の保全活動や里山体験のイベントを主催する鈴木さんが講師を務める授業に、子どもたちの表情も真剣そのもの。鈴木さんの優しい語り口調と、地元の山や森の話で、最初は緊張気味だった子どもたちの表情も和らいでいきました。

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「里山」をテーマとして授業で、最初に使われた映像教材は、地域の山々の移り変わりに関すること。学校周辺の山が明治時代にはハゲ山で、地域の人たちが木を植えて今の木々に囲まれた豊かな山々になっていることを学びます。

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明治時代から昭和の初期、そして現在の地域の景観を映像で見せることにより、子どもたちも近くの山がどの様に変わっていったのかがすんなりと理解できたようでした。
また、2本目の映像教材は、鈴木さんと一緒に事前に地域の里山で収録した映像教材を子どもたちに見てもらいました。この映像では、
・人が手を入れた里山と手を入れていない里山との違い
・間伐の意味やその重要性
・山の恵みに感謝することの大切さ
3点を映像で子どもたちに伝えました。

子どもたちも行ったことがあり、馴染み深い地元の里山の風景映像に、子どもたちの目もより一層輝きます。特に間伐については、小学校3年生の子どもたちにも伝わりやすいように、わかりやすい言葉をつかった説明となっていました。

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最初の授業後半は、クラスを6つグループに分け、子どもたち自らが考え発表するグループワークを実施しました。グループごとに考えるテーマは、「自分が将来大人になった時、里山について何ができるか考えよう」。

グループワークでは、地域で自然体験や野外活動の運営等を行う、体験創庫 かけはしの藤村さんが進行を務め、各グループの意見のとりまとめ役には、校長先生や地域の大人も加わり授業が進められました。

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「自然を壊さない」、「たくさんの動物に会いたい」等の意見の他、「作家になって里山の本をつくりたい」「里山のテレビ番組をつくりたい」等、子どもたちからはユニークな意見が挙げられました。

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各グループでまとめた意見は、グループの代表の子どもたちが教室の前に出て発表し、全員で意見の共有を行い、最後に学習シートに授業の感想をまとめました。

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普段の授業では行われないグループのみんなで考えや意見をとりまとめ、全員で共有する授業は、子どもたちにも新鮮だったようで、全員がとても前向きに取り組む姿が印象的でした。

そして、2コマ目の授業は、講師に山岳ガイドの石塚さんを迎え、「山道」をテーマに授業を行いました。

授業ではまず、石塚さんに協力を頂き収録・制作した映像教材を子どもたちが視聴しました。

1つめの映像教材は、山道を歩いていくと周りの景色も変わり、奥山や樹木が生育しない森林限界の景観も映像の中に加え、映像を通して登山体験を行う教材を目指しました。
子どもたちは奥山という言葉を知ったり、標高が高くなると、植物が生息出来ない事を知り、映像教材とともに、石塚さんの授業に引き込まれていきました。

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「迷子にならない」、「安全のため」等の子どもたち自身の視点の他、「動物が入ってこない様にする」、「植物を守るため」等、生きものや植物の立場からの意見等、子どもたちの柔軟な発想で、様々な意見が出ていました。

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グループごとにまとめた意見を代表の子どもたちが発表した後は、山道が何のためにあるのか、山道の重要性を学ぶための映像教材を視聴しました。

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今は、登山等のレクレーションで利用する山道ですが、「昔は、動物が通った後を人間が追いかけて出来た道」。「狩りをしていた時は、山道は生活の場そのものであったこと」そして、現在の山道は、「人間と生きものとの区切る境界線であること」を,子どもたちは映像を通して学びました。

「里山」の授業と同様、最後には、「山道」をテーマとした授業の感想を子どもたちが学習シートにまとめ、代表の児童が発表を行いました。

発表からは、「里山」も「山道」も、「人の手が入り、整備されることにより機能していること」、また、「里山も山道も人と生きものや植物とが共生している場所」であることが、鈴木さん、石塚さんの授業を通して子どもたちにもきちんと浸透したことが伝わってきました。

授業終了後、学校の先生方からは、「2コマ連続の授業にも関わらず、飽きずに子どもたちが授業を受けていたことにびっくりした」とのコメントもありました。

今回の教育カリキュラムは、松本市内の地域の里山や山道を題材として映像教材を制作しました。今後、源池小学校の3年生以外の学年や松本市内外の他の小中学校にも、今回の映像教材が活用されることが期待されています。