地域の自然資源から発電する再生可能エネルギーを知ろう
岐阜県岐阜市の長森南中学校は、環境教育に力を入れ、外部の専門家と連携しながらユニークな学習スタイルを取り入れています。今回のESD推進事業では、エネルギーをテーマに、これまで学んできたエコ活動や知識を振り返り、再生可能エネルギーについて理解を深める事業を2回実施しました。(2014年1月14日、20日実施)
先ず第一回目の授業では、再生可能エネルギーの概要について。生徒たちは家庭で行った省エネチェックの結果を共有し、省エネを行わないと、温暖化が進んでしまうこと、化石燃料の枯渇が心配されていることなどを話し合いました。そして、日本のエネルギー自給率が僅か4%ほどであることや、新しいエネルギーとして注目されている再生可能エネルギーについて、その種類やしくみについて学びました。
再生可能エネルギーの概要については、CGアニメーションを使って分かりやすく解説した映像教材を活用しました。言葉で聴いただけではイメージしにくい再生可能エネルギーの発電のしくみは、アニメーションで示されることでぐっと分かりやすくなり、たくさんの事柄を、短い時間でポイントをおさえて学習することができます。映像を見たのちに、生徒たちは各再生可能エネルギーのメリット、デメリット、これからの課題や今後どんな使い方をしていけばよいかについて話し合いました。
更に、電球(蛍光灯とLED)、電池(使い捨てと充電池)、車(軽自動車と電気自動車)、発電(火力と新エネルギー)において、値段や電力量、CO2排出量などを比較しながら、どちらがよりエコか、自分だったらどちらを選ぶかといったことについて話し合い、エネルギーについての自分の考えを深めてゆきました。
翌週開催された2回目の授業では、自分たちの身の回りに視点を移し、学校や地域での取り組みについて学びを深めました。
長森南中学校の屋上には、太陽光パネルが設置されています。そこで、授業では、学校の太陽光パネルの発電量やエネルギーの使用量について、教務主任の長屋先生の解説によって、映像教材で学びました。学校の13教室で1時間に20キロワット程、年間200-300万円分の電気代がかかっていますが、太陽光パネルがあることで、全体の使用量の15%くらいを賄えているそうです。太陽光に頼るばかりではなく、同時に節電を進め、電気を「ムリなく、ムダなく、ムラなく」上手に使うことが大事です。
映像の後は、自分たちが実際にどんなことができるのか、生活を振り返りながら話あいました。授業の中では、担任の先生と専門家の先生のそれぞれが、日常生活の中にあるヒントやアイデアを導き出し、共有しながら、生徒たちとの活発的なディスカッションが行われました。
そして、岐阜県郡上郡白鳥町の石徹白(いとしろ)で、地域の自然資源を使い、小水力発電や薪を使った生活を営みながらエネルギーや食の自給自足を目指して暮らしている平野さんの活動を、映像教材を通じて学び、意見を交わしあいました。
東京で経営コンサルタントの仕事をしていた平野さんが、エネルギー問題の深刻さに気づき、自分たちの力でエネルギーを作る新しい暮らし方を求めて、石徹白に移り住むことを決めたという事実は、生徒たちの心に響くものがあったようで、皆真剣に映像に見入っている姿が印象的でした。
岐阜県には、森林、河川など豊かな自然がたくさんあります。その地域の自然の恵みを活かした生き方があるということに是非気づいて欲しい。学校や石徹白といった、生徒たちにも馴染みの深い地域の映像が紹介されることは、グローバルな問題から、地域や足元の暮らしへと意識を結びつける、大きなきっかけとなりました。
この授業は、1年生の4クラスで同時に実施されました。同じ映像教材を使いながら、各担任の先生の個性や教えたいポイントをもとに、柔軟に授業構成をアレンジできることも、映像教材の強みのひとつと言えます。
これから益々注目される、再生可能エネルギーと地域の資源を活かした暮らし。この教材は今後も、学校で長く活用されることとなりそうです。