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授業レポート
大阪府八尾市

八尾市中高安小学校(大阪)「ニッポンバラタナゴの暮らす八尾の自然を未来に残そう」〜実施レポート〜

  • 2015.09

【ニッポンバラタナゴから考える持続可能な地域づくり】

八尾市中高安小学校(大阪)「ニッポンバラタナゴの暮らす八尾の自然を未来に残そう」〜実施レポート〜

大阪府八尾市。春には「花屏風」と呼ばれる美しい風景が広がるこのまちは、ため池が豊富で「ニッポンバラタナゴ」の生息地としても知られています。かつては、日本の各地で見られたものの、現在はすっかりその数が減り、絶滅危惧種にも指定されているニッポンバラタナゴ。このタナゴを守ることは、実は、八尾市の美しい自然や歴史文化を守ることにもつながっているのです。

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そんな、生きものたちのつながりや、人の暮らしとの関係を学ぶための授業を「八尾市立中高安小学校のの5年生を対象に実施しました。

授業を行ったのは、活動をしているNPO法人ニッポンバラタナゴ高安研究会の加納先生。ニッポンバラタナゴの赤ちゃんを観察し、その様子をスケッチするという授業に、今回は始めて「映像教材」を導入しました。ニッポンバラタナゴと地域の自然や人の活動とのつながりにも意識を向けるきっかけを提供することが目的です。

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(加納先生(中央)を講師に授業がスタート。NHKの取材も入りました)

まずはじめに、子どもたちにも馴染みのある、「ニッポンバラタナゴの暮らすまち」という観点から、八尾市の風景を映像教材で紹介します。

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(◆映像教材1「ニッポンバラタナゴのすむまち」。八尾市に今でもニッポンバラタナゴが暮らしているのは何故か、問題意識を共有する)

全国的にその数が減って絶滅危惧種と言われているニッポンバラタナゴが、この八尾市には残っているのは、何故か。ヒントは、映像に登場する「ため池」にあります。流れの少ない淡水に暮らすニッポンバラタナゴにとって、ため池は、重要な生息地となっているのです。

 

いのちのつながりを知る

では、ため池はどうしてニッポンバラタナゴの生息にいい環境なのでしょう?「水がきれいだから」「栄養があるから」など、子どもたちからはさまざまな意見が飛び出します。

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(ドブ貝の中に、ニッポンバラタナゴが産みつけた卵)

「綺麗だからいい、というわけではないんだ。ニッポンバラタナゴが暮らすためには、他にもそこにいる必要がある生きものがいるんだよ。それが何か、わかるかな…?」加納先生が尋ねると、小学校で飼育していることもあってか「ドブ貝!」と子どもたちからは直ぐに元気に反応がありました。ニッポンバラタナゴはドブ貝に卵を産みつけます。そして、ドブ貝の赤ちゃんは、ヨシノボリという魚にくっついて成長します 。生きものたちは、互いに、支え合っているのです。

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(◆映像教材2:ニッポンバラタナゴとつながるいきもの)

ニッポンバラタナゴについて、ますます知りたくなった子どもたち。今度は、ニッポンバラタナゴ高安研究会の人たちが用意したドブ貝に産みつけられた卵を観察し、その様子をスケッチしていきます。

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細かなところまで観察することで「血が流れている!」「いろいろな色がある」と、たくさんのことに気づくことができます。映像教材を観て、実際にニッポンバラタナゴをよく観察して、その様子を絵に描く。そして感じたことをクラスのみんなと話し合う。この一連の作業を通じて、子どもたちはニッポンバラタナゴをますます身近に感じるようになってきました。

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(ニッポンバラタナゴの卵の産みつけられたドブ貝を観察する)

八尾市高安地区には、現在300を超えるため池がありますが、ニッポンバラタナゴが生息しているのは、そのうちのわずか一部です。人口減少が進み、一次産業の衰退も進んでいることから、ため池を使う習慣が廃れ、汚泥を田畑に流し込み、池を干して綺麗な山水に入れ換える「ドビ流し」がほとんど行われなくなり、ため池の環境も変化してしまったのです。

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(◆映像教材3:ニッポンバラタナゴのすむ池を守る)

「こんなにたくさん池があるのに、ニッポンバラタナゴが暮らせるところは少ししかないなんて・・・」。子どもたちは、加納先生とのやりとりを通じて、この大切な生きものが暮らせる環境を守るためには、人間の生活のあり方を見つめ直すことが必要ということを、初めて考え始めました。

子どもたちは授業のあと、この映像教材を家庭で家の人たちと一緒に視聴し「ニッポンバラタナゴが暮らせる環境をつくるために、何ができるか」を話し合いました。保護者からは「環境の変化により、キラキラひかるバラタナゴが急にいなくなって、大人になってから貴重なものと知りました。バラタナゴがいきているこの地を大事にしなければ・・・と再確認しました」「ため池の水質を守っていくために、人間たちの生活を見直す必要があることを学んできたようです。自然に生かされている人間が自然を壊すことを平気でやっている気がします。家族で「まず、何ができるか?」をよく話し合って、もう1度、環境について考えていきます」といった感想が寄せられました。

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(ニッポンバラタナゴの保護池で生きもの調査をするNPO法人ニッポンバラタナゴ高安研究会の皆さん)

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(水源の森を守ることも、地域の自然やそこに住む人たちの暮らしを守るうえで大切なことの一つ。ニッポンバラタナゴ高安研究会では水源の森を守るために森林の整備にも力を入れている)

この映像教材は、八尾市教育委員会とNPO法人ニッポンバラタナゴ高安研究会の協力を得て、三井住友信託銀行のCSR活動の一環として作成されました。三井住友信託銀行の八尾支店は、ニッポンバラタナゴを守る活動を長年支援し、その大切さを多くの人に伝えたいと、ロビーでニッポンバラタナゴの飼育・展示を行っています。

ニッポンバラタナゴ高安研究会の加納先生は「今後もこの映像教材を使った授業を各地で実施し、ニッポンバラタナゴを守ることと地域を大切にすることのつながりを多くの人に伝えていきたい」と考えているそうです。

人口が減少し、この授業を実施した八尾市中高安小学校は、近くの学校に統廃合されることが決まっています。子どもたちの学習をひとつのきっかけに、地域の未来を、地域の人たちみんなで考えている流れが生まれていったら素敵ですね。

参考:三井住友信託銀行のホームページ  http://www.smtb.jp/csr/esd/