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授業レポート
愛知県名古屋市

都会のオアシス、藤前干潟の生き物を観察しよう

  • 2015.03

愛知県名古屋市を流れる堀川沿いに位置する八熊小学校では、堀川や藤前干潟を題材とした学習が展開されています。今回のESD推進事業では、5年生を対象に、生き物と環境や季節の変化について学ぶ授業を実施しました。

まず最初に、藤前干潟の自然環境や生き物たちを紹介する映像を視聴し、これまでに行った生き物観察の様子を思い出しながら、どんな生き物が、どんな場所で発見できたかなどを振り返りました。藤前干潟は、名古屋港南西部の庄内川、新川と日光川の河口が合流する、藤前地区に広がる干潟で、その豊かな生態系の価値が世界的にも評価され、ラムサール条約登録湿地にも認定されています。

(映像教材では、藤前干潟の生き物たちの生息する姿が豊富に紹介された)

(映像教材では、藤前干潟の生き物たちの生息する姿が豊富に紹介された)

次に、堀川を紹介する映像を視聴することで、堀川の特徴や見られる生き物のことなどを振り返りました。堀川は、名古屋市を流れる庄内川水系の一級河川で、江戸時代に、建築資材運搬用の運河として伊勢湾から名古屋城付近を結ぶためにつくられた人工の川で市街地を流れていて、藤前干潟とは大きく環境が異なります。堀川をきれいにしようという、市民たちの運動があるように、水質汚濁やゴミの投げ捨てなども目立つ川ですが、よく観察してみると、ここにも魚やカニなどの生き物たちが生息しているのです。

(地図や周辺環境なども提示しながら、堀川をわかりやすく紹介)

(地図や周辺環境なども提示しながら、堀川をわかりやすく紹介)

これらの映像を参考に、藤前干潟と堀川の違いについて比較し、クラスで話し合ったあとは、堀川に出向き、前年から年間を通じて堀川で調査してきた外来種チチュウカイミドリガニや水温について観察を行ないました。仕掛けにカニはかかっていませんでしたが、先生がこれまでの調査データや学習の振り返りをしながら、子どもたちにカニがみられなかった理由は何故か、堀川をどんな川にしていきたいかを尋ねると、真剣に考えている姿が印象的でした。

(学校近くの堀川のほとりの仕掛けにカニを観察に出かけた)

(学校近くの堀川のほとりの仕掛けにカニを観察に出かけた)

このプログラムを通じて作成した藤前干潟の魅力を伝える映像教材は、NPO法人藤前干潟を守る会や、環境省アクティブレンジャーなど、地域で活動する人たちの協力により作成されました。この映像は、ARコンテンツとして「藤前干潟ワークブック」(発行:中部地方環境事務所)に紐付けられ、無料ARアプリ(junaio)がインストールされたスマートフォンやタブレット端末を表紙にかざすことで、誰でも視聴することができるようになっています。これによって、映像教材がワークブックとともに、学校の授業で活用されたり、家族や地域の人たちにも使われるようになるなど、さまざまな学びの可能性が広がりました。

(藤前を守る人たちの協力によってつくられたARコンテンツ)

(藤前を守る人たちの協力によってつくられたARコンテンツ)

(藤前干潟ワークブックのARコンテンツの活用ガイド)

(藤前干潟ワークブックのARコンテンツの活用ガイド)

藤前干潟は、名古屋市の人たちが、ゴミ埋め立て場設置計画から守ったとても大切な場所です。その想いが引き継がれることに、今回の授業で生まれた映像教材が少しでも貢献できたら素敵ですね。