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持続可能な社会の資本となる人づくりのためICT映像教材による子どもから大人までの多様な学びを支援しています。

授業レポート
宮城県南三陸町

身近な湿地「田んぼ」の価値を見つめ直す

  • 2014.05

日本人の主食となるお米が育つ田んぼ。そこは、豊かな生物多様性を育む場所でもあります。湿地を守るためにつくられた国際条約「ラムサール条約」では田んぼの価値が認められ、ラムサール湿地としても登録されています。
MS&ADインシュアランスグループは、田んぼを含む湿地の保全や、湿地を賢く利用しながら自然や生きものを守る活動を推進することを目指して「ラムサールサポーターズ」という活動を立ち上げ、NPOなどの団体とも協力しながら、全国各地で環境保全活動を展開しています。

「田んぼ」はいのちを育む場所
2014年1月、同グループはこれまでの活動を通じて作成した映像教材を活用し、南三陸町の小学校(名足小学校、志津川小学校)で、「いきものを育む豊かな湿地〜生物多様性を守ろう〜」という授業を実施しました。
志津川小学校の授業は4年生の子どもたちを対象に実施されました。授業で活用された映像教材には、渡り鳥である白鳥の「スワン」が登場し、子どもたちに、水辺が何故、渡り鳥にとって大切なのかを問いかけます。「みんなの暮らしている近くの田んぼには、どんないきものたちがいますか?」

(白鳥の「スワン」の目線から、生きものと水辺・湿地の関係を考えていく)

(白鳥の「スワン」の目線から、生きものと水辺・湿地の関係を考えていく)

子どもたちは「カエル」「ゲンゴロウ」など生きものたちの名前をたくさんあげ、講師役のMS&ADインシュアランスグループ総務部 地球環境・社会貢献室の浦嶋裕子さんはその発言を一つひとつホワイトボードに書きとめ、子どもたちと双方向に対話しながら授業を進めてゆきます。「みんな、たくさんの生きものの名前を知っているね。もしも田んぼがなくなったら、そこにいる生きものはどうなってしまうかっていう質問が、白鳥のスワンからあったけれど、みんなはどう思う・・・?」

ここで、子どもたちは映像を通じて、今、世界中でたくさんの生きものたちが絶滅していること、生きものたちのいのちはつながっていて、もしも生きものたちの暮らす場所がなくなってしまったら、私たち人間も、自然から食べものをいただくことが難しくなってしまうこと、などを学んでいきます。

(映像教材を使い、子どもたちに問を投げかけながら授業を実施するMS&ADインシュアランスグループ総務部 地球環境・社会貢献室の浦嶋裕子さん)

(映像教材を使い、子どもたちに問を投げかけながら授業を実施するMS&ADインシュアランスグループ総務部 地球環境・社会貢献室の浦嶋裕子さん)

「ふゆみずたんぼ」には発見がいっぱい
「でも、生きものたちが暮らしやすいように、冬の間も田んぼに水をはる『ふゆみずたんぼ』という農法があるんだって。みんな、聞いたことはあるかな・・・?」今度は、身近な自然環境に目を向けるために、南三陸町のふゆみずたんぼの映像を見ながら、生きものが豊かな田んぼとはどういうものをいうのか、どうして田んぼに生きものたちがいることが重要なのかについて、学びを深めていきました。

(「NPO法人田んぼ」の主導によって復元された南三陸町の田んぼ、田植えや生きもの観察の活動が展開された活動)

(「NPO法人田んぼ」の主導によって復元された南三陸町の田んぼ、田植えや生きもの観察の活動が展開された活動)

(映像教材は、この南三陸のふゆみず田んぼの活動現場で撮影された)

(映像教材は、この南三陸のふゆみず田んぼの活動現場で撮影された)

「冬にも水がはってある田んぼには、イトミミズやユスリカのようなたくさんの生きものたちが育ち、その生きものたちの力で、とろとろの栄養たっぷりの土ができて、立派なお米が育つ田んぼができるんだね・・・」。田んぼはお米をつくるためだけの場所ではない、ということを知って、子どもたちは驚いた様子です。

そして、湿地を守る「ラムサール条約」という国際条約で、田んぼもとても価値のある湿地として認められていることを知り、そんな立派な田んぼが自分たちの暮らす地域のそばにあることを知ると、とても嬉しそうな表情をしていました。

(ラムサール条約登録湿地の美しい風景と「田んぼ」のイメージが、授業を通じてつながってきた)

(ラムサール条約登録湿地の美しい風景と「田んぼ」のイメージが、授業を通じてつながってきた)

(子どもたちから、多くの発見や気づきが共有された)

(子どもたちから、多くの発見や気づきが共有された)

足元の自然と世界とのつながり
「みんなの暮らしや身近な自然のことを考えることが、世界の自然や生きものたちを守ることにもつながっていくんだね」。田んぼを題材にしたことで、子どもたちにとっても、日常の暮らしや生きものと食べもののつながり、世界の自然を守ることの関係が、イメージしやすかったようです。授業のあとの感想では、「エサがあり、寝どころになっている水辺は、生きものたちにとって大切なのだと分かった」「1日100種類の生きものが絶滅していると知って驚いた」「宮城にもラムサール条約に登録された場所があるんだ」など、たくさんの言葉が寄せられました。

 

(授業の後、感想シートにはとても多くの言葉が綴られた)

また、先生からは「田んぼの様子をみてお米ができるだけという意識だけしかなかった子どもたちが、授業を通じて、生きものたちとのつながりを学ぶことができてよかった」というコメントがありました。

日本人にとって身近な湿地「田んぼ」を題材としたこの授業は、同じ南三陸町の名足小学校でも実施された他、今後は全国各地の小学校や環境学習の現場でも展開される予定です。