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授業レポート
石川県金沢市

加賀の伝統食から紐解く、食生活の大切さ

  • 2014.04

石川県金沢市。加賀の伝統文化息づくこのまちには、職人の手によって現在も継承される伝統食がたくさんあります。金沢市の泉中学校では、「金沢の環境が育んだ食」をテーマに、校区内にある金沢の食文化を受け継ぐ老舗(今川酢造、中初商店、四十萬屋本舗)を見学し、生徒たち自身がインタビュー取材を行い、また、そういった伝統の食品や調味料をつかった調理実習等を行うことを通じて、地域に根づく伝統の食文化について探求していきました。

20140408-1

 

(中初商店の蔵を見学し、ものづくりへのこだわりについて取材する生徒たち)

(中初商店の蔵を見学し、ものづくりへのこだわりについて取材する生徒たち)

 

(酢づくりへの想いを語る、今川酢造の三代目社長、今川英雄さん)

(酢づくりへの想いを語る、今川酢造の三代目社長、今川英雄さん)

 

(四十萬屋本舗では、金沢伝統のかぶら寿司づくりの体験会が開催されている)

(四十萬屋本舗では、金沢伝統のかぶら寿司づくりの体験会が開催されている)

今回の授業を担当した泉中学校の浜中真希先生と松坂浩一郎校長先生は、授業の実施にあたり「単に伝統食が大切ということばかりではなく、日常生活における価値観と照らし合わせた上で、その時の自分の感性でものごとを受けとめること」を大切に考えて授業を組み立ててきました。

そこで、これまでの授業の総まとめ的な位置づけとなる今回の授業では、反転授業という手法を導入し、老舗でのインタビュー映像をインターネット上のサーバーに設置し、授業の前に家庭の人にも見てもらうとともに、生徒たちに、普段家庭では食材を選ぶ際にどんなことを大切にしているのかというアンケートをとってもらいました。そしてその結果をもとに、金沢の食文化を大切にすることにはどんな意義があるのか、そのために自分たちはどんなことを考えて生活していけばよいのか、実際の家庭生活で自分たちは金沢の伝統食にどのように触れているのか、などについて話し合っていきました。

 

(「作る人」「買う人」両方の立場から食についての考えを問う浜中先生)

(「作る人」「買う人」両方の立場から食についての考えを問う浜中先生)

訪れた伝統食の老舗で、共通して大切にされていたものは何か。生徒たちは「食材」「発酵(調味料)」「歴史」「作る人」の4つの視点から考察していきます。歴史ある建物で、先代から継承した方法で、こだわりの国産の食材を使って、自然の力を上手に使って食物を発酵させていること。その年の気候や天候の影響により少しずつ味に変化も生じるけれど、心を込めてつくられたこだわりの味があること・・・。そして、そういった食文化がある金沢に暮らす自分たちの家では、親はどのような基準で食材を選んでいるのか。

 

(生徒たちは、伝統食の特徴について話し合い、共通点を表にまとめた)

(生徒たちは、伝統食の特徴について話し合い、共通点を表にまとめた)

普段こういった会話を家庭内ですることはほとんどない生徒たちも、この授業を通じて、健康や安全を考えて食材を選ぶ、といった親の心にも触れることになりました。中には、伝統食の醤油を使うようになったらアトピーが収まったという兄弟の話を披露する生徒もいて、これまで調査し学んできた以上の、実生活に基づく新鮮な発見もありました。

 

(保護者アンケートの結果を報告する松坂校長先生)

(保護者アンケートの結果を報告する松坂校長先生)

 

(授業を通じて感じたことを発表しある生徒たち)

(授業を通じて感じたことを発表しある生徒たち)

 

作り手の想いがあり、商品の価値を理解しそれを求める買い手がいることで、伝統食が守られていく。もちろん、買うばかりではなく、家庭で作っていくことも大事。そして、今はその価値がわからなくても、いつか金沢を離れた後に、故郷に戻って来た時に、金沢の持つ食文化の豊かさやその貴重さを改めて発見することになると思う・・・。

授業ではさらに、金沢の食文化を広めようと地域で活動する児童館の館長やクッキングスクールの理事長さんのメッセージを紹介することで、金沢伝統食を大切に想う、買い手側の気持ちも紹介しました。

共通して伝えられるのは、郷土金沢への想い。生徒たちはこの授業を通じて、自分たちの暮らす地域の可能性や文化の深みに触れ、食以外の文化にも関心を持ち始めたそうです。

(授業に協力した人々からの共通のメッセージは金沢への郷土愛にあった)

(授業に協力した人々からの共通のメッセージは金沢への郷土愛にあった)

 

授業で得た学びを、これからは他の地域の人たちや、金沢を訪れる外国人にも発信していきたいと語る先生や生徒たち。クラスが終わっても、生徒たち、そして伝える大人たちの関心はその先のさまざまなことに結びつき、育ち続けているということを感じさせる、とても素晴らしいESD(持続可能な開発のための教育)の授業でした。

今後の泉中学校でのESDの推進が、益々楽しみです。