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授業レポート
神奈川県鎌倉市

古都・鎌倉の景観を守る「御谷(おやつ)の森」でのトラスト運動とは?

  • 2015.05

地域の自然や景観を開発から守るために、イギリスで始まったナショナル・トラスト活動。その日本での発祥の地が、鎌倉であることをご存知でしょうか。

ナショナル・トラスト活動の意義や地域の人たちの活動について知り、地域の未来を考えるきっかけを提供する授業が、2015年1月30日、ナショナル・トラスト活動を支援する三井住友信託銀行の職員によって、鎌倉市の七里ガ浜小学校にて、4年生と5年生を対象に開催されました。

 

日本のナショナル・トラスト活動発祥の地 鎌倉

国内外から、年間2000万人を超える観光客が訪れる、古都・鎌倉。鶴岡八幡宮は、そのシンボル的な存在です。このまちの美しい風景が守られているのは、地域の人たちの想いと活動があるから。子どもたちは、そのことをどれくらい知っているでしょうか。映像1では、鎌倉の裏山「御谷(おやつ)の森」で活動する「鎌倉風致保存会」の活動について紹介し、鎌倉の景観が守られている理由について考えるきっかけを提供します。

(映像教材1「鎌倉と風致保存会」より。鎌倉の裏山、御谷の森を紹介)

(映像教材1「鎌倉と風致保存会」より。鎌倉の裏山、御谷の森を紹介)

 

「鶴岡八幡宮」裏山の宅地開発計画 
日本が高度経済成長期を迎え、各地で開発が進められている1964年、鶴岡八幡宮の裏山に、宅地開発の計画が起こりました。もしも、開発が進んだらどうなるでしょう。そのイメージを示す合成写真を見ると、子どもたちは思わず「嫌だ」という声を発します。開発から、鎌倉の歴史的景観を守らなくては。イギリスのナショナル・トラスト活動を知る鎌倉在住の作家・大佛次郎や、鎌倉の市民たちがたちあがり、土地を守るための運動を展開。この、日本で最初のナショナル・トラスト活動によって、鎌倉の裏山は守られたのです。

 

 

(映像2「開発が進められた時代」より、宅地開発のイメージ写真。画像提供:鎌倉市都市計画課)

(映像2「開発が進められた時代」より、宅地開発のイメージ写真。画像提供:鎌倉市都市計画課)

 

 

「古都保存法」の成立にも貢献
鎌倉風致保存会は、このナショナル・トラスト活動とともに誕生しました。そして、この活動がきっかけとなり、全国の美しい歴史的景観を守るための「古都保存法」が生まれたのです。この法律ができたことで、京都や奈良などの美しい景観も守られている。「鎌倉の自然や景観を守ることが、他の地域を守ることにもつながっているのだね」。講師役の三井住友信託銀行、石坂彩子さんが投げかけると、嬉しそうに頷く子どもたちの姿も。

 

(映像3「開発から自然を守る活動」より。鎌倉風致保存会の活動がきっかけで、古都保存法が生まれた)

(映像3「開発から自然を守る活動」より。鎌倉風致保存会の活動がきっかけで、古都保存法が生まれた)

 

景観を守り続けるために必要なこと
昔の人たちが一生懸命守ってきた、鎌倉の景観。これを未来に引き継ぐために、鎌倉では風致保存会の人たちが今でも活動を続けています。例えば、山が荒れて土砂崩れがおこったりすることを防ぐために、森林の整備をするのも、そのひとつ。現在は高齢のメンバーが多い、鎌倉風致保存会。その活動の様子を紹介すると、子どもたちは「若い人たちも、活動を手伝わなくてはいけないね」などと話し合っていました。

 

(映像教材4「鎌倉の景観を守る人たち」より。自然が荒れ放題にならないように活動をする風致保存会の人たち)

(映像教材4「鎌倉の景観を守る人たち」より。自然が荒れ放題にならないように活動をする風致保存会の人たち)

 

自然と触れ合う体験が、子どもたちの感性を高める
授業を実施した七里ガ浜小学校の近くには「広町の森」と呼ばれる広大な都市林が存在します。この森もまた、地域の人たちが、開発から守ってきた土地。現在、七里ガ浜小学校の子どもたちは、この森で活動する市民団体の人たちの協力で、学校の授業の一環として、田植え体験などを行っています。

授業の一番最初に「鎌倉のどんなところが好き?」と尋ねると、子どもたちの多くが「自然!」と答えました。「きっと、この学校の子どもたちは、自然体験を通じて、自然を身近に感じているからかもしれませんね」。学校の先生たちからは、そんな言葉がありました。
授業のあと、子どもたちからは「御谷の森のことは知らなかったので、勉強になった」「鎌倉の自然をずっと守っていきたい」「風致保存会の人たちの活動を手伝いたい」などの感想がありました。

(映像教材5「豊かな自然のある暮らしを守ろう」。七里ガ浜小学校の子どもたちにとって、広町の森は、身近にある大切な自然)

(映像教材5「豊かな自然のある暮らしを守ろう」。七里ガ浜小学校の子どもたちにとって、広町の森は、身近にある大切な自然)

 

この映像教材は、鎌倉市教育委員会や鎌倉風致保存会、鎌倉広町の森市民の会など多くの人たちの協力のもとに作成されました。この教材は、今後、鎌倉市の他の学校でも活用されていく予定です。

 

(授業を見学した鎌倉市の松尾市長から「鎌倉を守っていくために、皆さん力をあわせてがんばりましょう」とのメッセージ)

(授業を見学した鎌倉市の松尾市長から「鎌倉を守っていくために、皆さん力をあわせてがんばりましょう」とのメッセージ)